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1930. 疑似体験 [地歴公民科]

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                          孔子 (B.C.551頃~479頃)

 英数国の科目は、習った事を明日の生活にすぐ生かせますが、倫理はちょっと違います。最初の「青年期の課題」はまだいいのですが、次の「先人の思想」に入ると視線が宙を泳ぐ人が何人か出てきます。未体験ゾーンだからです。なかなか明日からすぐに、とはいきません。

 例えば、孔子の生きたB.C.6世紀頃の中国は群雄割拠の時代でした。法律も警察もないのです。他人を信じたら一家皆殺しの目に遭うかもしれません。そんな時代に「親への愛(=仁)を周囲の人々にも広げよ」と説いた孔子は何と破天荒な人だった事でしょう。彼の教えを乞うた諸侯達も結局はその先の長い理論に愛想をつかし、彼を追い返しました。

 当時は、秦の始皇帝のブレーンの李斯や韓非子の説く性悪説に基づく強権政治が求められました。しかし李斯は残酷な死刑で、韓非子も毒殺で悲惨な最期を迎えます。と、このような背景を想像できないと、先哲の偉大さは理解できません。

 同様に欲望のコントロールを迫る仏教も、挫折体験の少ない高校生には無理だと思っています。私は仏教思想の概略は伝えますが、
「まずは欲望ギラギラで人生に挑みなさい」
と話します。そして
「50歳になったら、再び仏陀の言葉を眺めてごらん」
と言います。水に飛び込まないと水泳の面白さが分からないように、仏陀やイエスの言葉は辛い社会経験が無いと心に入って来ないからです。そんな即効性のない科目を、私は自分の経験を疑似体験させながら何とか教えています。

** 高校生のコトバ **************************

どどいつ:使うつもりで 買った日傘を もったいないと しまい込む  (雪見だいふく)


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コメント 4

ハマコウ

高校で学んだ「倫理・社会」、戸惑っていたことを思い出します。
-「50歳になったら、再び仏陀の言葉を眺めてごらん」
この言葉を高校生の時に聞いていれば‥
知識としてぼやっと覚えているくらいでよいのですね。
ある程度の年齢になってからそれに気がつけば、その後の生き方に役立つように思います。
by ハマコウ (2023-09-16 06:24) 

サボテン

ハマコウ様、
 「あなたがして欲しい事をあなたの隣人にしてあげなさい。」これはイエスの言葉ですが、高校時代の私は嫌いでした。お節介の論理だからです。それよりは「あなたがして欲しくない事を人にしてはいけません」という孔子の言葉の方が好きでした。やがて結婚して子供ができ、彼が病気で入院した時初めてそれが逆転しました。我が子に接する態度を見て、看護師は患者がして欲しくない事をしないだけではなく、欲する事を先取りしてするべきだと教えられたからです。体験しないと分からない事、きっとこの歳でもたくさんあるんだろうなあと思っています。
 コメントありがとうございました。
by サボテン (2023-09-16 17:55) 

tyuuri

 以前、「大般涅槃経」(岩波文庫では「ブッダ最後の旅」)を、エスペラント訳するために、浄土真宗のお坊さんらと共に、半年ほどかけて読んだことがありますが、心を打たれたのは、(異文とも言われますが)従者のアーナンダに「この世界は美しいものだし、人間の命は甘美なものだ」と死期を前にした80歳のブッダが話したくだりでした。「無常」を教えたブッダらしからぬ言葉ですが、なんと人間味に富んだ言葉でしょう。
 ブッダが慕われるのは、こういった慈悲の言葉の数々なのかもしれません。私は65歳になりますが、少し分かりかけてきました。
by tyuuri (2023-09-16 20:15) 

サボテン

tyuuri様、
 まさにこの気づきこそ、年齢のなせる業と感じます。私も、現在の生活を甘い飴を味わっているかのように感じています。おいしいのでいつまでも舐めていたいのですが、次々と違うおいしさのものが与えられるので、一つにこだわっていられません。諸行無常や諸法無我といった変転の現実は、高校生にとっては辛さや不安を引き起こすものに違いありませんが、その不快な殻が何回か壊された後、嬉しい真実が見えて来るのだと思います。仏陀の人生の後半がのどかだったのは、前半に大変な苦痛と苦悩があったからだと思ってます。
 コメントありがとうございます。
by サボテン (2023-09-17 00:26) 

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