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1560. 思い出 [思い出話]

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                          特急「ひばり」

 学生時代、私が帰省する時は上野から仙台まで特急「ひばり」を利用していました。当時としては3時間58分という「短い」乗車時間は大きな魅力でした。今は1時間半ですが。

 ある年の暮れ、列車は超満員となり、客室内に入れない私は出入り口近くの通路に立っていました。本も読めず、退屈極まりない時間でした。向かい側に立っていた外国人男性も、私同様に退屈そうに見えました。そこで私は英語版のキモ試しと覚悟を決め、ドキドキしながら話しかけてみました。
「May I talk to you?」
「Sure!」
 トラック英語学習(No.168) が通じて、私は天にも昇る気持ちになりました。彼は建築家志望のレバノン人で私と同い年、日本の建物を見ようと全国を回っているのだそうです。たどたどしい英語でやり取りしている内に仙台駅に着きました。泊る所は決めていないと言うので実家に電話を入れ、我が家に泊ってもらう事にしました。当時レバノンは国際的な紛争地域だったので、私の両親はかなり不安だったと後に語っていました。

 その後しばらく国内での親交は続き、彼は私の結婚式にも出席してくれました。しかし帰国後レバノン内戦が激しくなり、彼とは連絡が取れなくなってしまいました。彼の語った言葉だけが鮮明に残っています。
「お金は旅行に使います。思い出は盗まれる心配がありませんから。」

 以来私達夫婦も、許される範囲で彼の精神を受け継いでいます。

** 高校生のコトバ **************************

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コメント 6

hagemaizo

カルロスゴーンに聞かせてあげたい、心あるレバノン人の話。
by hagemaizo (2021-08-25 19:24) 

tyuuri

 素晴らしい出会いですね!
 エスペラント(国際語)だと、"Ĉu vi parolas Esperante?" "Certe!" となるのかな。
 もっと国際語が普及して欲しいです。
by tyuuri (2021-08-25 19:57) 

サボテン

hagemaizo様、
 ホントにそう思います。どの国にも、良い人がいると同時に心ない人もいるんですよね。という事は逆に、アフガニスタンのタリバンの中にも、どうか心優しい人がいますように…。
 シリア、アフガン、北朝鮮、中国、ベラルーシ、ブラジル、フィリピンなど、今の時代にまるで戦国武将のような独裁者が出てきているのが気になります。
 コメントありがとうございました。
by サボテン (2021-08-25 20:31) 

サボテン

tyuuri様、
 またいつかインターネットででも会えたらいいなあと思っています。
 昔、大学にはエスペラント語サークルがありました。私は入らなかったのですが、なぜその後普及しなかったのでしょうか。歴史的背景の持つ微妙なニュアンスが伝わらないからでしょうか。この歳になると新しい言語の習得は無理ですが、せめて英語だけでももう少し何とかしたいとあがいています。
 コメントありがとうございました。
by サボテン (2021-08-25 20:53) 

kousaku

成程ね、いい言葉ですね、「お金は旅行に使います。思い出は盗まれる心配がありませんから」。
by kousaku (2021-08-26 13:01) 

サボテン

kousaku様、
 私は彼に「車とか欲しくないの?」と聞いたのですが、彼は首を横に振るばかりでした。当時の私は車が欲しかったので、その感覚は理解できませんでした。しかし人生の後半に差し掛かった頃から、車をいくら買い替えても思い出が残らなければ意味がない事に気づき、人生観を変えました。いくら断捨離しても思い出は減りませんからね。早くからそれに気づいていた彼には頭が下がります。
 コメントありがとうございました。

by サボテン (2021-08-26 14:33) 

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