孔子 (B.C.551頃~479頃)

 英数国の科目は、習った事を明日の生活にすぐ生かせますが、倫理はちょっと違います。最初の「青年期の課題」はまだいいのですが、次の「先人の思想」に入ると視線が宙を泳ぐ人が何人か出てきます。未体験ゾーンだからです。なかなか明日からすぐに、とはいきません。

 例えば、孔子の生きたB.C.6世紀頃の中国は群雄割拠の時代でした。法律も警察もないのです。他人を信じたら一家皆殺しの目に遭うかもしれません。そんな時代に「親への愛(=仁)を周囲の人々にも広げよ」と説いた孔子は何と破天荒な人だった事でしょう。彼の教えを乞うた諸侯達も結局はその先の長い理論に愛想をつかし、彼を追い返しました。

 当時は、秦の始皇帝のブレーンの李斯や韓非子の説く性悪説に基づく強権政治が求められました。しかし李斯は残酷な死刑で、韓非子も毒殺で悲惨な最期を迎えます。と、このような背景を想像できないと、先哲の偉大さは理解できません。

 同様に欲望のコントロールを迫る仏教も、挫折体験の少ない高校生には無理だと思っています。私は仏教思想の概略は伝えますが、
「まずは欲望ギラギラで人生に挑みなさい」
と話します。そして
「50歳になったら、再び仏陀の言葉を眺めてごらん」
と言います。水に飛び込まないと水泳の面白さが分からないように、仏陀やイエスの言葉は辛い社会経験が無いと心に入って来ないからです。そんな即効性のない科目を、私は自分の経験を疑似体験させながら何とか教えています。

** 高校生のコトバ **************************

どどいつ:使うつもりで 買った日傘を もったいないと しまい込む  (雪見だいふく)