香月泰男氏の作品「北へ西へ」 (宮城県美術館の案内パンフレットより)



 旧ソ連に抑留された
画家香月泰男氏の絵画展を見ました。香月氏は、復員後しばらくは家族にもシベリアでの辛い抑留生活を語りませんでした。しかし1950年代後半から堰を切ったように描き始め、シベリア・シリーズと呼ばれる57点の作品となりました。予備知識無しに行った私は、はじめは「ゴッホの描き方に似てるかな」程度の見方でしたが、やがて黄土色と黒で描かれた今まで見た事もない『変な』暗い絵に惹きつけられていきました。横に小さく掲示された香月氏のメモが衝撃的だったからです。



メモ

 ・マイナス35度になると作業は免除。

 ・氷の凍土は固く、1m四方の穴を掘るのに丸二日かかる。

 ・60kgの豆袋を背負って200m先の船着き場へ。

 ・紐で縛られ皮を剥がされた日本兵の赤い遺体。

 ・死んだ仲間を見るとうらやましいと感じる。

 ・ソ連兵もソ連の軍隊に捕われの身。

 ・太陽を見ると、これを家族も見ていると思って湧く勇気。

 ・行き先を告げられずに貨車に寿司詰めにされる不安。…



 「悲しい」「苦しい」等、言葉にしたとたんに薄まってしまう生の感覚を、絵画という具体的な形で確認する作業が芸術ですが、メモは私の想像力をより強化してくれました。シベリアに抑留された方々の辛さの一端を追体験できた気がします。はじめは『変な』描画法と感じましたが、彼の感じた特別な感情世界はこれ以外の方法では表現できない事もよく伝わってきました。



〇香月泰男展について

https://www.fashion-press.net/news/73774



** 高校生のコトバ **************************



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(Y.S.)