全日本空手道選手権七連覇の清水希容選手

 毎年、授業での模擬裁判で問題になるのが次の裁判です。皆さんが裁判官ならこの被告人Xは有罪ですか、無罪ですか?

 被告人Xは来日8年の大柄の英国人で、空手3段。事件当夜、Xは日本人の女が被害者男性Yと大声でもめている所に出くわした。女は転倒しXに「ヘルプミー、ヘルプミー」と叫んだ。XがYの方へ近づくとYはファイティングポーズをとったため、Xは自己と女の防衛のため、回し蹴りをYにあびせた。Yは転倒し頭蓋骨骨折で8日後に死亡した。

 ところが、実はこの女とYは事件当夜一緒に飲食しており、Yが酩酊した女を帰宅させようと店外へ連れ出したところ、女が暴れ出したのでYが女を落ち着かせようとしていただけだった。女の「ヘルプミー」もXへの酔った上での悪戯であり、Yのファイティングポーズも、外人に襲われると思ったYの防御の姿勢であった。

 昭和62年のこの裁判、一審はXを故意も過失もないとして無罪としました。しかし最高裁は逆転有罪としました。理由は、「大柄な英国人でしかも空手3段の凄腕が、小柄な日本人相手に回し蹴りをするのは、防衛の範囲を超えており、過剰防衛(刑法36条2項)となる」というものでした。皮肉な事に、空手やボクシングが強くなるほど、喧嘩はできなくなるという事なんですね。それにしてもXは本当にお気の毒でした。

** 向光性のコトバ **************************

川柳 : 泣く人は その場しのぎの うまい人 (S.S.)